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セルフメディケーションでの役割

セルフメディケーションを正確に指す言葉はありませんが、セルフとは自分・自己という意味であり、メディケーションは治療という意味の医学用語で、訳せば「自己治療」となります。

 

意図することは語感の印象と少し違い、WHOでは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度の身体の不調は自分で手当てする」と定義していますが、具体的な実践になると職能や団体によって目的や範囲が微妙に異なっています。

 

 

 

医療とは健康の自己管理が基本

  • 子供、お年寄り、持病を抱えている方には保護や補助が必要
  • 一般的には自身の健康を維持する努力が大切

自身の健康状態を把握する

セルフチェック(自己診断)

小さな怪我や病は直ちに治療する

一般用医薬品、衛生関連用品

生活改善を図り病気にならない体づくり 病気の方は悪化させないように注意する

サプリメント、代替医療

運動、睡眠、休養

 

セルフメディケーションの定義と実践

 

セルフメディケーションの定義

 

自身で手当てを行うためには、医療器具や薬品等を使用することになりますが、医療用医薬品は医師の指示(処方せん)が必要である為、使用するのは一般用医薬品(OTC医薬品)に限られます。

 

医薬部外品やサプリメントなどを使用することもあり、自覚症状以外に不調を把握するために、体温計や血圧計を利用するセルフチェックは問題となりませんが、高度な医療器具を利用するには難しいことがあります。

 

セルフチェック

 

 

自身で手軽に行えるセルフチェックと、OTC 医薬品等を用いて手当てをすることを狭義のセルフメデイケーションの範囲とします。

 

また、古来から伝統的に受け継がれてきた漢方や和方と称される東洋医学関連の療法が、日本において普及し世界各地の伝統医学が紹介され、効用・評価について様々な議論が行われています。

 

自身の健康維持に重きを据えると、治療に増して予防が優先されるので、日常生活の健全化が図られ食事と運動が基本スタンスとして構築されます。

 

適正な睡眠や休養の必要性を強調し、生活を改善するという主張は、健康増進法の趣旨とも合致し、このように拡張した範囲を広義のセルフメディケーションと呼んでいます。

 

セルフメディケーション(範囲)

 

 

セルフメディケーションの主体が一個人にあることが重要なことであり、行政・業界・医療関連団体でもありません。セルフメディケーションの捉え方についての適正な国民調査はありませんが、個人差があることは容易に推測されます。

 

食事と運動が健康を維持するための基本というのは共通スタンスで、それでも身体の不調を自覚した際に取るべき行動を準備するのがセルフメディケーションであり、OTC医薬品の利用は緊急時の特効と捉える旨が適切となります。

 

セルフメディケーションの効用

 

セルフメディケーションの定義と実践を把握したとしても、本人が意識的に参加するには明確な動機づけを与える必要性があります。

 

日本の皆保険制度では、原則として病気と診断された際に、自己負担金を支払えば医療費の負担がなく、また逆に身体に異常がない場合でも、健康維持を理由に保険金の償還や報奨があるわけでもありません。

 

セルフメディケーションの推進減退の理由の一つに、保険制度が絡んでいることは事実ですが、保険制度が財政危機に直面しているとの理由で、セルフメディケーションによる回避策がとられることは説得力に欠けるものです。

 

セルフメディケーションの効用

 

  • 実施者への利点…本人へ健康維持の恩恵がもたらされる、療養中の方は悪化の阻止、未病の方には予防効果
  • 医療・介護施設への利点…医療専門職を軽医療から解放し、集中施療にチェンジすることによる医療の効率化実現
  • 国・地方自治体への利点…財政負担の軽減によって、保険料・税金負担を減額又は据置が可能(負担者は国民、自治体住民)

 

実践への状況認識

 

国民にセルフメディケーションを推進する上では、参加しやすい環境を整えることが先決であり、国民の思考は年齢・職業・家庭環境などによって多種多様である為、医療や健康に関しての専門知識に個人差があるのは止むを得ず、また育ってきた環境によっても経験の差があるのは当然です。

 

生活の智恵などは、古くは大家族の暮らしの中で祖父母を通しての実体験の伝達や、近隣同士での共有がありましたが、歴史的変遷により大家族は消滅し核家族化となり、またITに象徴される情報通信の発展は、一律の情報をネットワーク網を通じて、個人が全世界に発信することが可能となりグローバル化が突き進んでいます。

 

個人が必要とする情報と実践を支援する基盤のバランスを整え、体制が整備されることはもちろんのこと、体制の整備には国民一人一人がまずその必要性を自覚することが前提となります。

 

健康状態にある方では、高齢化や罹病の現実の想定が乏しく、自身がセルフメディケーションを実践するポジティブな要素とはならないので、国や自治体の行政と国民が目的意識を共有し、学校・市民教育として徹底した取り組みが必要となります。

 

地域ベースの体系化

 

島国である日本は、南北に長い地形で山岳地帯と沿岸地帯で季節変動が大きく、セルフメディケーションの理念を全国一律の施策で共有しても、都市部と過疎地域、特に離島などの条件が医療、介護システムに著しい影響を及ぼすことで発展を望むことが難しくなります。

 

市町村単位での実践が望ましいですが、参加する住民は年齢や職種によって思考や生活行動パターンが異なりますので、一律の筋道では好ましくなく、少なくとも住民の意思を踏まえた地域ベースの体系化を構築することが挙げられます。

 

医師不足が指摘される中でも、医師は医療に専念するのが得策で明らかであるので、医師以外の医療関係者である保健師、薬剤師の活用が特に必要不可欠となります。

 

食事管理として栄養士、運動指導として健康運動指導士など、広義のセルフメディケーションでは専門職への期待が大きく膨らみます。

 

セルフメディケーションの概念を適正に把握していることが条件となりますが、伝統医療を掲げて指導を行う方にも積極的な協力が求められます。

 

 

 

セルフメディケーションの背景

 

医・衣・食・住

 

戦後は「衣・食・住」の生活の基本を求めて再建が行われ、世界でも有数の経済大国に成長し、理想的な社会の継続を人々は期待しますが、生活が豊かになることで心にゆとりができても、常に生命の脅威と隣り合わせという現実があります。

 

生活水準が安定しても、高度成長が停滞し経済が不安定になると、不安や恐怖など新たな問題が生じてきますが、底辺にあるのは生命の脅威です。

 

最大なものでは自然災害と人為災害が挙げられ、自然災害では地震や風水害、人為災害では戦争を頂点とする犯罪となります。

 

災害は築き上げた資産を破壊し、物理的にも心理的にも多大なる損失を与えます。災害を防ぐには、人間の英知と結束が肝腎であることを歴史が告げ知らせています。

 

もう一つ人間の脅威となるのが死へとつながる疾病であり、「病」は古代から人々を苦しめ続け、苦しみは祈疇や宗教にもつながり、人間は苦しみから逃れるために様々な模索と努力を続けました。

 

病の原因追究で得た退ける智恵の代表が「くすり」であり、20世紀になると科学技術の革新的な進展によって医療は大きく進歩し、多くの「病」を治療し克服するまでに至りました。

 

体の代謝機能や血圧を調整する医薬品の出現により、代謝性疾患や感染症による死亡率は低下し、また病原微生物に対する抗生物質製剤の躍進などで、平均寿命は確かに延びましたが、疾病における死亡率の低下や寿命の存続は、不安や恐怖の直接的な解消の要因とはなっていません。

 

たとえ急性期疾患による生命の危機を脱しても、自然と訪れる老化によって身体機能の低下が進行し、現代人の多くが抱える生活習慣病の慢性疾患によって健康が脅かされます。

 

身体的な問題だけではなく、実際に進行している高齢化社会によって、高齢者介護のため転職や退職を余儀なくされる人など、国の財政負担も含め深刻な問題となっています。

 

このような現実社会を見通した上でも健康が一番であることは明らかで、衣食住が生活する上での基本条件であることに変わりはありませんが、この必要条件が確保された上での健康保障制度が、安心して暮らせる社会の基本要件となります。

 

これらの思想は日本に限らず全世界共通の望みであり、医療の施策が優先される現代社会においては、生活の基本は医・衣・食・住と考えるのが妥当でしょう。

 

セルフメディケーションと国民皆保険制度

 

人々が安心して生活ができる社会を築き上げることは、各国にとって重要な課題であり、20世紀以降の近代国家では、法制度によってこれらのインフラを整えようと努めてきました。

 

戦後の憲法の制定では、第25条に国民は健康で文化的な最低限度の生活の権利を有するとし、また同2項に国は社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないと明記されています。

 

この制定が社会保障政策『年金・医療・福祉(介護)』の根底となり、1961年(昭和36年)に国民皆保険制度が成立し、世界に類をみない医療保険制度が誕生しました。

 

定着した背景にはいくつかの要因があり、戦争での犠牲者が多く、受益者となる高齢者の割合が少なかったことや、飛躍的な経済成長により企業・労働者の収益や給料が増加し、税金や保険料の負担を収集できたことが挙げられます。

 

また、国民の自主的な日々の努力と、病気になったら大変なので、少しでも健康に注意しようという精神が残っていたことも、重要なファクターとなっています。

 

何世代かに渡り同居生活をしていた時代では、子供が熱を発症した際は、医者に駆けつける前に水枕を用いて看病するのが一般的であり、年配者の子育ての経験が継承され機能していました。

 

下痢が続いた際も殺菌した湯で水分を補い、熱がない場合には「梅干入りの番茶」などを活用し、梅干の塩分が電解質の補充の役目となり、また番茶のタンニン成分が腸の収縮作用に繋がるという生活の知恵が凝縮されていました。

 

国民が健康に配慮し、小さな怪我や病は直ちに治療を行い、医療施設を要する場合には安心して保険医療を受けるという流れは、国民と政府(国)の役割分担が円滑に行われたことが国民皆保険を定着させた。その功績は大きい。

 

社会保障の財政危機と対応

 

社会保障政策の3本柱である年金、医療、福祉は人口構成の少子高齢化とバブル崩壊以後の経済成長の停滞が重なって深刻な財政的危機に直面する。社会保障関連の予算は一般会計の25% を占め、毎年1兆円の自然増である。老人の社会的入院が多いことによる医療費を是正するため2000年に介護保険制度が創設された。高齢者の増加により老人医療費が急増し、老人保健制社会保障政(国家予算の25%)策 一年金
ー児童手当・高齢者介護保険制度( 1961 )は世界に誇るヘき日本の偉業!!
・現実を直視しよう超高齢少子社会
・医療には金が要る36兆円、対GDP9.0%
・財源は税金か保険か消兇アッ
図3-3社会保障の経済的背景

 

度の維持が困難となり、2006年新たに後期高齢者医療制度を制定し、2008年より施行した。超高齢少子社会における社会保障の財源を確保することは大きな政治課題であり、対応を誤れば崩壊を招きかねない(図33。
医療の内容の変化にも注目しなければならない。 戦後の初期、 感染症を主とした急性期疾患から、 現在は生活習慣に基づく慢性疾患が主となった。 がんなどの高度医療に要する経費も高い。 これらの現代病は生活改善による予防や症状の緩和によって対応できる余地があると指摘されている。 高騰する医療費に対し、 制限や負担を論議する前に医療資源の効率化を図ることを優先すべきであり、 セルフメデイ ケーションはそのかぎを握っているといってよい

 

 

 

支援する人材育成と薬剤師の役割

 

支援する人材の育成

 

一般の生活者が医学、 医療に対して関心が高いからとい。て、 医療や医薬品に関する知識・技術のレベルが高いとはいえない。 中途半端な判断で、 セルフメデイ ケーショ ンを行うことは、重大な徴候を見落とし、間違った医薬品の使用によって、重症化を招く危険があるとの批判がある。 誤解や危険を回避するためにもセルフメデイ ケーショ ンを実践する人を支援する人材の育成が急務である。 核家族化によ。て失われた経験と智恵を伝える機能を復活させたい。 医療は病院内ではチーム医療、 地域では病院と診療所の連携等医療関係の職種が協力して行う動きがある。未病を含めた健康に異常を認めた人をかかりつけ医が各専門職種と連携して治療や相談に応じるプライマリ・ケアが各地で進められている。セルフメデイケーションと一致する点が多い(図3-8)。セルフメデイケーションは対象として健康な一般生活者を含み、範囲を食、運動という生活改善領域へ拡大するが、主体を実践する人に置き、各種専門職が支援する概念は同じである。患者、生活者、実践する人を消費者と読み替えれば、消費者主体に行政を転換しようという政策と完全に呼応することになる

 

薬剤師の該当性と役割

 

人材の候補として薬剤師は注目され、期待が大きい。理由はいくつか挙げられるか、医療法に医療の担い手として明記されていることと、薬事法に薬局と店舗販売業か一般用医薬品の販売を独占していることが法制度的裏付けになっている。生活者が居住する近くで、病院や診療所のような医療施設以外に健康問題を相談する場所として薬局、ドラッグストアは優位に立つ。現在地域の保健事業は保健所を中心に、保健師が主となっているが、健康増進法に基づく特定健康診査、特定保健指導の実施が円滑に軌道にのるためには生活指導とともに医薬品や関連商品の知識を有する薬剤師の参加が必要である。薬局、ドラッグストアは住民が気軽に相談できる健康交番の役割が求められている。
在宅患者訪問薬剤管理(健康保険法)、居宅療養管理(介護保険法)によって薬剤師が住民の家庭を訪問する活動はすでに公認され、今後進展するであろうが、店舗を有する薬剤師には限界がある。 薬剤師の医薬品に関する知識、 情報、 衛生に関する科学的判断は6年に及ぶ薬学教育によって培われたもので他の職種を圧倒する。 薬剤師は一緒に活動する保健師、 看護師、 栄養士、 健康運動指導士に正確で最新の現場で役立つ情報を常に提供することが義務である

 

 

 

セルフメディケーション支援に必要な教育と訓練

 

薬学教育の変遷

 

明治以降、 薬学教育は一貫して基礎科学と応用科学を根幹としてきた。 医薬分業がなされないまま、 薬物療法の主導は医師が担い、 調剤が薬剤師の主業務となったのは前世紀末である。 1998年、 第三次医療法改正によって薬剤師の医療への参加が明示されたが、職能教育の遅れは明白であった。
2004年学校教育法と薬剤師法の改正によって薬学教育は6年制となった。医療に貢献するために必要な知識・技能の習得と実務実習を通じての実践教育へと転換したのである。一方、この間の医療自体の変化を無視できない。医療は医師を中心として傷害や疾病を患う病人を対象と してきたが、 健康人や未病という疾病予備集団 の健康維持管理の間題が浮上してきた。 病院、 診療所を受診する前に相談する場所として薬局、 ドラッグストア、 相談に応じる薬剤師に社会は健康維持管理、 すなわちセルフメデイケーションの推進への寄与を期待した

 

薬剤師職能のコぺルニクス的転換

 

生活者が身近に起こる健康に関するイベントについて、最初に相談する場所と人を想定してみる。イベントは身体に生じる異変が原因であるから、身体の生理機能と主な病態とその対応について知識を必要とする。対応の中で薬物療法の比率は依然として高い。医薬品の開発、承認、製造、販売に関し法制度も含め熟知しているのは薬剤師である。生活者は、薬かサプリメントか食事に含まれる成分かを区別して聞くわけではないから、説明する薬剤師は医薬品に限らず周辺領域についても知っていなければならない。会話や表情から質問の意図、背景を的確に把握し、広告媒体も含めた多種類の情報を選別し、質問者か納得し実践するように導くためには問題解決型に思考方法を変えないといけない。
従来、 薬剤師職能とされてきた周剤、 医薬品管理という作業は、 医療の中で医薬品という物が対象で、 薬についての説明も医師の処方意図や安全な使い方に重点を置いてきた。 薬剤師は一連の医療行為の後半に位置づけられていたが、 健康管理の流れにおいては、 対象を物から人 移し、 一転して入り 口を分担することになる。 これは薬剤師職能をコペルニクス的転換させることになる。
がん治療や特殊薬剤の科学的使用等に薬剤師の専門性を活用する動きを否定するものではないが、 医療・介護・福祉を包括する健康政策が最大の国民関心事である現況において薬剤師は総合職能としてセルフメデイ ケーシ ン支援の先頭に立。てこそ社会の期待に応える役割を果たす。





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