マメ知識 お金の仕組み 6  最終回

マメ知識 お金の仕組み 6  最終回

マメ知識 お金の仕組み 6 最終回

今回は、日本の「金融緩和政策」と「日本国民、一人につき800万円の借金のナゾ」について
簡単にお話します。

その前に、少し簡単な予備説明をします。

「経済力」とは?

各種商品や、食品や建築物など物質的な生産物を「モノ」と表現します。

科学技術や医療、学問、防衛力など目に見えない生産物を「サービス」と表現します。

日本はこの「モノとサービス」を生産する力が極めて高いということで、
経済力がある国と見なされています。

「日本の国債」

「債券」という名前がついていますので、単純に借金と考えてしまいますが、

単なる借金というよりも、これまでお話してきたように政府が世の中へ「仕事を発注」したり

「研究や設備費用を補助」したりするために発行するものです。

「仕事の発注」や「費用の補助」をすることで、世の中に需要が生まれ、仕事が生まれ、
それは最終的にはみなさんの給与となるものです。

例えば、老朽化した公共物の補強の仕事を政府が国債で発注したら、
建築業界の人たちの仕事となり、
彼らの給与となります。

医療分野の研究費用を国債で補助したら、
大学や病院、製薬会社への仕事の発注となり、
関係者の給与となります。

つまり、国債は単純な借金と考えるものではないのです。

まして政府が発行した国債は、各金融機関で日銀当座預金の残高を使って購入され
(みなさんの預金を使うのではありません)

最終的には日本銀行に買い戻され回収されるわけですから、
政府が誰かにお金を借りているわけではないのです。

政府と日本銀行は簡単に言えば「身内」ですから、
お互いにお金の貸し借りは存在しないといえます。

一般家庭で言えば、お父さん(政府)が、子供(国民)に対して発行した「肩たたき券」(国債)を
子供がお父さんの肩たたきをしたあと、
お母さん(日本銀行)へ持って行き,
おこずかいに変えてもらうのです。

回収した「肩たたき券」はお母さんが保管しておきます。
お父さんとお母さんは同じ家計で生活していますので、
お母さんが「肩たたき券」の代金をお父さんに請求することは
ありませんよね。

「肩たたき券」で得をしたのは子供です。

同じように国債発行で収入を得るのは国民です。

国民の収入が増えれば、国の税収も増えるのです。

国債発行で損をする人はいないのです。

さて、日本の国債は100%「日本円建て」です。
つまり日本円でないと購入できないのです。

たとえアメリカや中国でも日本円でないと購入できません。

これが大事なポイントです。

つまり、アメリカや中国が日本国債を大量に買い占めて、
それを突如すべて売り払っても、
日本銀行が彼らの通帳に日本円で数字を記入すれば、
その代金を支払えるということです。

「本当にそれだけなの?」「何回聞いても不思議な感じがするなぁ」
とお思いの方もいるでしょうが、
日本の経済力が高いからできることですし、
だからこそアメリカや中国に無理に国債を買ってもらう必要もないのです。

それでも外国が「日本国債が欲しいなら、日本円で払ってね」ということだけなのです。

ですから、「日本国債」が大暴落するなどということは、ほぼ起きないということになります。

このしくみは、日本だけではなく、
アメリカ、イギリス、スイス、など自国の中央銀行が「通貨を発行できる」
権利を持ち、「国債が自分の国の通貨で売買」される国ならどこでもできることです。

日本国民同様、各国の国民はそんなこと知らされていませんけど・・・。

それでは本題です。

①「日本銀行の金融緩和策」って?

「金融緩和政策」という言葉を、黒田総裁が就任してからよく耳にしますが、アレってどういうことでしょう?

簡単な流れはこうです。

政府が発行した「日本国債」は、今までお話したように主に金融機関が購入しています。

なぜなら国債を購入すれば金利がついてくるからです。

少ない金利とはいえ、日本国債は信用度が高いため人気があります。
金融機関の主な収入源です。

「金融緩和政策」は、金融機関が持っている日本国債を半ば無理やり買い取ってしまうことです。

そうすると、日本銀行はその代金を各金融機関が持つ「日銀当座預金」という口座へ記帳します。

100億円買い戻したら、金融機関の通帳に100億円と記入するだけです。

そこで日本銀行のお偉いさんはこのように考えました。

「国債を買い取ってもらって100億円残高が増えている金融機関は、
余裕ができるので企業に低金利でお金を貸し出せるだろう」
 
「低金利なら企業もどんどんお金を借りて、設備投資や人材確保に使うだろう。
そうすれば世の中の消費が増えるぞ」

ところが、みなさんなら違和感を感じるでしょう?

そうです、「金利が安いからって、そんなにお金を借りるかなぁ?」

実際にその通りの事が起きました。
思ったほど企業はお金を借りなかったのです。

当たり前ですよね?

前回「デフレ」の説明の時にお話ししましたが、
一般市民が消費を控えているのは「先行き不安」が
あるからです。

同様に、企業も仕事量が増える見込みもないのに、
金利が安いからってそんなにお金を借りませんよね?

まして、政府は国債発行を減らし、
税金を上げようとしているのですから、
仕事量も消費量も増える見込みはりません。

ところが、日本銀行は自分たちのプライドがあるので、
自分たちが正しいことが証明されるまで、
「金融緩和政策」を今もやめていません。

これだからエリートってタチが悪いんですよね。

その結果、政府が国債の発行を減らしているのに、
日本銀行は国債をどんどん買い取っていくわけですから、
金融機関の持つ国債の数量がどんどん減っていきました。

それでも人気のある日本国債は「希少価値」のために金利がますます下がっていき、

国債が欲しい金融機関は「金利はいらないから国債をくれ」ということになり
その結果「ゼロ金利」になったり、

買い手である金融機関が「逆に金利を支払うから国債をくれ」
という状態になったのが「マイナス金利」という現象です。

信用度の高い国債の数が少なくなると、金利が下がるのはお分かりですね?

信用度の高い(人気のある)国債の数が少ないと
金利というオマケが少なくても買ってもらえますよね。

人気のない、または数の多い国債は
オマケをたくさんつけないと買ってくれませんよね?

逆を言えば、「金利の高い国債」は信用度も低いということなのです。

結局、現在でも企業は金融機関からお金を借りていませんし、
金融機関の持つ国債の数も少なくなってきていますので、
金融機関の収入も不安定になってきています。

ですから、彼らはATMの手数料をはじめ、各種手数料を上げたりしてきています。

やはり、しわ寄せは私たち一般市民にきているのです。

「政府の国債発行=世の中への仕事の発注」とお話しましたが、

現在は国債発行を邪魔され、世の中の仕事(需要)が増えていませんので、

企業もそれに向けた準備(設備投資)をしていません。

日本銀行が国債を大量に買い取る「金融緩和政策」自体は悪いものではありません。

ただ、国債を買い取る反対側で、
政府が国債を発行しなければ「片手落ち」となり、
景気浮揚、安定策にはならないのです。

自転車をタイヤひとつで走らそうというようなものです。

②「日本に借金はあるの?」

TVや新聞で「日本国民1人につき800万円の借金がある」などと言われていますが、

では、私たちはその800万円の借金をどこに返せばいいのでしょうか?

国でしょうか?

国に返済するなら、日本の国(政府)自体に借金は無いことになります。

逆に国が私たちに800万円を借りているのでしょうか?
それなら私たちは800万円もらえることになります。

(少し前に、○上 彰さんの番組で、パネラーのひとりが同じようなことを質問していましたが、
○上さんはスルーしていました。)

では外国に借りているのでしょうか? 

日本国債は100%円建てですから、いつでも返済可能です。
返済可能な借金を、メディアがことさら取り上げることはないですよね。

では金融機関がもってる国債を借金と呼んでるのでしょうか?

これも先ほどからお話しているように、日本銀行がどんどん買い戻している状況です。

「じゃ、借金ってなんなの?」

そうなんです。早い話が日本に借金なんてないのです。

TVやマスコミが口を揃えてみなさんに伝えている「国の借金」とは、

要するに税金で賄えない不足分を

わざわざセンセーショナルに「借金」という言葉を使ってあおっているだけなのです。

そうすれば、国民が負い目に感じて税金を上げることに賛成するだろうと思っているのです。

国の財政問題を小さな町内会の会費と同じ目で見ているのです。

町内会は収益を生み出すことはありませんから、すべて会費で賄わなければいけません。

国は国民がそれぞれ経済活動して「収益を生み出す共同体」ですから経済力が備わっているのです。

町内会を暗にほのめかし、”すべて税金で賄わなければいけない” 
”国債は皆さんの貯金を使って返済することになるんですよ”などと、
メディアを使って言いふらすのですから、

私たちもバカにされたものですよね?

色々な施設が年々老朽化したり、
災害が増えて耐えられないものが増えたり、
年金受給者が増えて年金支給額も増えます。

医療費や、科学技術の研究費用など資金が不足している分野はどんどん増えていくわけですから
税金だけでは到底賄えないのです。

「ならば、使う量を減らせばいい。そうすれば、国からの支給額も少なくて済むじゃないか。
税金を払うのがイヤなら、支給額も減らすぞ」

これが国(○務省)の言い分です。

もっとくだけて言えば…

「施設の耐震化なんてできる範囲でやればいいじゃん、
そのせいで死ぬ人が増えてもしょうがないじゃん、
だって借金があるから」

「年金なんて維持する必要ないじゃん、
どうせ年寄りなんだから。早く死ねばお金もいらないでしょ。
だって国は借金があるから」

「医療費の個人負担もどんどん増やすよ。
だって国は借金があるんだから。
医療費払えない人は病気のままでいなさい」

「科学技術なんて要らないでしょ?
アメリカ様や中国様のいいなりでいればいいの。」

「医療分野も進歩しなくていいじゃない。
どうせ人間は死ぬんだし、病気になったら苦しいのは仕方ないでしょ?」

腹が立ちますよね? 私も書いていて腹が立ってきました。(笑)

つまり、「夢など見ずに、最低限度の消費、最低限度のレベルで生活しなさい」と言っていることになります。

しかし、いくらみなさんが生活レベルを落として、
税金を払うことにがんばって貢献しても限界がやってきます。

みなさんが生活向上をあきらめて、
息をひそめた生活をすれば、世の中の消費が減りますので、
みなさんの収入も少なくなります。

つまり税収も上がらないのです。

その一方で、公的資金が必要な額は年々増えていきます。
差など縮まらないのです。

逆に縮める必要もないのです。

みなさんが人生を楽しむことをやめて、倹約をがんばって
すべてを税金で賄えるようになったところで、
そのころにはド貧民になっている日本が、
海外諸国から頼られるわけでも、
世界の中で今以上に優位になるわけでもないのです。

それよりも、いろいろなところに資金を投入し、
落ちてきている経済力、技術力を上げることのほうが
世界の中で優位に立て、その技術力で世界に貢献できるのです。

資金が必要なところに
まともな財政計画も立てずに、
ウソの借金話を広めて税金だけで賄うことに、
こだわっている人たちにとって、
今の日本の危機は「他人事(ひとごと)」であり、
ひょっとしたら、他国の回し者?って思いますよね。

私たちは資金不足を補える方法が十分にあるのですから、余計に無念です。

幸い、今なら日本にはまだ高い経済力があります。

諸外国と取引できているのは、信用度の高い経済力があるからです。

それほどの経済力と信用力がある日本円を、計画的に発行すれば(国債発行)、

税金の不足部分を補え、かつ長期的な財政計画を立てることができるのです。

それにより、資金不足で苦しんでいたり、
死にかけていた様々な分野の産業が息を吹き返すでしょうし、

多くの企業も設備、人材投資に資金を動かすようになり、
世の中に需要がどんどん生まれていきます。

つまり、「世の中が活性化」され、「みなさんの収入も増えていく」のです。

そしてその結果、○務省の望む税収も増えていくのです。

政策の順番がまったく逆なのです。

これまで「お金のしくみ」をお話してきました。

読みにくい文章におつきあい頂きありがとうございました。

「お金」とは、硬貨や貨幣のことではなく、「しくみ」そのものであることがご理解いただければ、

世の中のお金のながれや、財政問題が見えてきたと思います。

今、諸外国や特に日本が抱える問題は、私たちがダマされている財政問題に解決が見られれば、
多くのことが快方に向かいます。

そういったことを踏まえて、今後のニュースに触れてみてください。

「それって本当にそうなの?」と感じることが大切です。

次回より、タイトルを変えていろいろお話していきたいと思います。

注)これまでのお話しは京都大学 大学院教授 藤井 聡先生の
講演や著書、メールマガジンを基に、わかりやすくするために私見を交えてお話させていただきました。

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コメント

  1. すごくためになりました!シリーズを見返して頭にたたみ込みたいと思います!

  2. ほしみなさん、お読みいただきありがとうございます。
    残念ながら、TVや新聞の報道で信用できるのは、天気予報とスポーツニュースぐらいしかありませんので、
    大切なことは、またご紹介していきますね。

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